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微小振幅波(2)


ここでは微小振幅波(1)で書いたように、

$L = \frac{g}{2\pi}T^2 \tanh \left( 2\pi \frac{h}{L} \right)$

$C = \frac{gT}{2\pi} \tanh \left( 2\pi \frac{h}{L} \right)$

を導いていきます。話が難しくなるので、大学1、2回生ぐらいの方は飛ばしたほうがいいかもしれません。挑戦しようと思う方は挑戦してみてください。

まず始めに、微小振幅波を考える上で仮定をしなくてはならないことがあります。(1)水自体に関すること(2)水底に関すること(3)水面に関すること(4)振幅に関することの四点です。一つずつ順番に見ていきましょう。

・仮定(1)水自体に関すること

まず、水は水理学でもそうであったように、非圧縮、非粘性と仮定します。すると、速度ポテンシャルを用いることができ、速度ポテンシャルは

$\frac{\partial ^2 \phi}{\partial x^2} + \frac{\partial ^2 \phi}{\partial z^2} = 0$

というラプラス方程式が成立します。

・仮定(2)水底に関すること

水底を突き抜けるような水粒子は存在しません。それを境界条件として踏まえなくてはいけないので、水底において下向きの速度が0と考えると

$w = - \frac{\partial \phi}{\partial z} = 0$     @     $z=-h$

という式で表すことができます。

・仮定(3)水面に関すること

水面では2つの境界条件があります。一つは水面から水粒子が飛び出さないということ、もう一つは水面で圧力は0になるということです。水粒子が飛び出さないという仮定をするために、水面形の方程式を考えると

$z = \eta \left( x,t \right)$

と表すことができ、この式を変形すると
$F \left( z,x,t \right) = z-\eta \left( x,t \right) = 0$

と表すことができます。これから、水面から水粒子が飛び出さず、水面の曲面が連続であるためには、時間での全微分も0でなくてはいけません。ということは、
$\frac{DF}{Dt} = \frac{dz}{dt}-\frac{D\eta}{Dt} = 0$

という式が成立するということです。ここで、
$\frac{dz}{dt} = w = -\frac{d\phi}{dz}$

を使うと、
$\frac{\partial \phi}{\partial z} + \frac{\partial \eta}{\partial t} + u\frac{\partial \eta}{\partial x} = 0$     @    $z=\eta $

という式になります。次に、水面の圧力が0という仮定を考えます。圧力に関することなので、水中圧力に関するベルヌーイの一般方程式を考えると
$- \frac{\partial \phi}{\partial t} + \frac{1}{2} \left( u^2 + w^2 \right) + \frac{p}{\rho} + gz = 0 $

と表すことができます。これが、水面($z=\eta$)において圧力が0になるので
$-\frac{\partial \phi}{\partial t} + \frac{1}{2} \left( u^2 + w^2 \right) + g \eta = 0$

となります。

・仮定(4)振幅に関すること

微小振幅波なので $\eta \simeq 0$ とすると、粒子速度$u$、$w$も微小量となります。これらの積はさらに微小量だと考えられるので、積の項を0で近似します。すると、上で求めた水面に関する仮定の二式は、

$\frac{\partial \eta}{\partial t} + \frac{\partial \phi}{\partial z} = 0$     @     $z=0$

$\eta = \frac{1}{g} \frac{\partial \phi}{\partial t}$     @     $z=0$

となります。以上で仮定は終了です。以降は正体のはっきりしない速度ポテンシャル$\phi$を求めていきます。

微分方程式を解くことになるので、$\phi$の関数形を仮定します。$\phi$は

$\phi \left( z,x,t \right) = Z \left( z \right) \cdot X\left( x \right) \cdot T \left( t \right) $

とおくと変数分離が使用できる状態になります。こんな$z$と$x$と$t$を分離した形でいいのかと思う方もおられると思いますが、「仮定した解の形で解くことができればその仮定は正しかった」ということになります。そして、ここではこの形で解くことができるのでこの仮定は正しいということになります。

ではまず、ラプラス方程式に代入しましょう。代入すると

$Z \cdot T \cdot \frac{d^2 X}{dx^2} + X \cdot T \cdot \frac{d^2 Z}{dz^2} = 0$

となります。お分かりだと思いますが、偏微分だったものがただの微分に変わっています。これを $Z \cdot X \cdot T$ で割ると
$\frac{1}{X}\frac{d^2 X}{dx^2} = - \frac{1}{Z} \frac{d^2 Z}{dz^2}$

となります。ここで、左辺は$x$の関数、右辺は$z$の関数となっていて等号が成立するには定数にならなくてはいけません。すると、
$\frac{1}{X}\frac{d^2X}{dx^2} = -\frac{1}{Z}\frac{d^2 Z}{dz^2} = - k^2$

となります。ここで $-k^2$ としたのはこれより後の便宜上の理由からです。この式から $X$ と$Z$ が求められるので、解いてみると
$X \left( x \right) = A \cos \left( kx \right) + B \sin \left( kx \right)$

$Z \left( z \right) = C e^{kz} + D e^{-kz}$

となります。$A$、$B$、$C$、$D$は定数です。残る$T$は直接求めることができません。しかし、正弦波で進行波を考えることから、 $\cos \left( \sigma t \right)$ 、$\sin \left( \sigma t \right)$の組み合わせとして表現しておけば都合がいいと考えられます。結果として、速度ポテンシャルは
$\phi _1 = A_1 \left( C e^{kz} + D e^{-kz} \right) \cos \left( kx \right) \cos \left(\sigma t \right)$

$\phi _2 = A_2 \left( C e^{kz} + D e^{-kz} \right) \cos \left( kx \right) \sin \left( \sigma t \right)$

$\phi _3 = A_3 \left( C e^{kz} + D e^{-kz} \right) \sin \left( kx \right) \cos \left( \sigma t \right)$

$\phi _4 = A_4 \left( C e^{kz} + D e^{-kz} \right) \sin \left( kx \right) \sin \left( \sigma t \right)$

となります。これらの任意の組み合わせまたはそれぞれが解になります。

これから、$\phi$の中の定数を求めていきます。まずは、仮定(2)から得られた

$w = - \frac{\partial \phi}{\partial z} = 0$     @     $z = -h$

に代入すると、
$Ak \left( C e^{kz} + De^{-kz} \right) \cos \left( kx \right) \sin \left( \sigma t \right) = 0$

となります。この式は、四つのうちのどの式に代入しても得られます。この式が常に成立するには、
$C e^{-kh} + D e^{kh} = 0$

となる以外にありえません。ここで $z$ が $-h$ に変わっていることに注意してください。この式を整理すると
$C = D e^{2kh}$

になります。この等式を $\phi _1$ に代入して
$\phi _1 = A_1 D \left( e^{2kh} \cdot e^{kz} + e^{-kz} \right) \cos \left( kx \right) \cos \left( \sigma t \right)$

が得られます。ここで、
$\cosh \left( x+y \right) = \frac{e^x e^y + e^{-x} e^{-y}}{2}$

を用いると
$\phi _1 = 2A_1 D e^{kh} \cosh \left[ k\left( h+z \right) \right] \cos \left( kx \right) \cos \left( \sigma t \right)$

とまとめることができます。次にこれを
$\eta = \frac{1}{g} \frac{ \partial \phi}{\partial t}$     @     $z=0$

に代入すれば
$\eta = -\frac{1}{g} 2\sigma A_1 De^{kh} \cosh \left( kh \right) \cos \left( kx \right) \sin \left( \sigma t \right)$

となります。ここで、$z=0$ も代入しました。この式は、振幅を表しているので振幅を $H/2$ とすると、$\eta$の絶対値の最大値 $H/2$ をとるのは $\cos \left( kx \right) \sin \left( \sigma t \right)=\pm 1$のときです。このとき、上で求めた式は
$A_1 D e^{kh} = \frac{gH}{4 \sigma \cosh \left( kh \right)}$

となります。$\phi _2 \sim \phi _4$ までも同様にして求めます。求められた式をもう一度速度ポテンシャル$\phi $の式に戻すと
$\phi _1 = \frac{gH}{2 \sigma} \frac{\cosh \left[ k \left( h+z \right) \right]}{\cosh \left( kh \right)} \cos \left( kx \right) \cos \left( \sigma t \right) $

$\phi _2 = \frac{gH}{2 \sigma} \frac{\cosh \left[ k \left( h+z \right) \right]}{\cosh \left( kh \right)} \cos \left( kx \right) \sin \left( \sigma t \right) $

$\phi _3 = \frac{gH}{2 \sigma} \frac{\cosh \left[ k \left( h+z \right) \right]}{\cosh \left( kh \right)} \sin \left( kx \right) \cos \left( \sigma t \right) $

$\phi _4 = \frac{gH}{2 \sigma} \frac{\cosh \left[ k \left( h+z \right) \right]}{\cosh \left( kh \right)} \sin \left( kx \right) \sin \left( \sigma t \right) $

という四式が得られます。これらを組み合わせることで、進行波や定在波などを表現できます。ちなみに進行波の速度ポテンシャルは $\phi _2 - \phi _3$ で求められ
$\phi = \phi _2 - \phi _3 = - \frac{gH}{2\sigma}\frac{\cosh \left[ k \left( h+z \right) \right]}{\cosh \left(kh \right)} \sin \left( kx - \sigma t \right)$

となります。また、表面波形は
$\eta = \frac{1}{g}\frac{\partial \phi }{\partial t}$     @     $z=0$

に代入することで求められ
$\eta = \frac{H}{2} \cos \left( kx - \sigma t \right)$

になります。これではまだ最初の波長と波速の式が得られていないので、その二式を求めます。仮定(4)で求めた
$\frac{\partial \eta}{\partial t} + \frac{\partial \phi}{\partial z} = 0$     @     $z=0$

に$\eta$と$\phi$を代入すると
$\sigma ^2 = gk \tanh \left( 2\pi \frac{h}{L} \right)$

が得られます。角周波数の式 $\sigma=2\pi /T$ と波数の式 $k=2\pi /L$ を代入すると
$L = \frac{g}{2\pi}T^2 \tanh \left( 2\pi \frac{h}{L} \right)$

$C = \frac{gT}{2\pi} \tanh \left( 2\pi \frac{h}{L} \right)$

が得られます。以上で終了です。かなり長くなってしまいましたが理解できましたか?やっていることはそれほど難しくはないと思うんですが…文字の数が多いですよね。微小振幅波はまだもう少し続きます…(;^_^A


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